総合問題という新傾向を知る

従来の教科ごとの枠を超え、複数の教科・分野を横断的に扱う「総合問題」が増える時流にあります。
これは大学法人トップから命じられたものであり、実際にこのような問題作成を教育学・教育情報学・民間の教育シンクタンクの協力のもと、大学の教員な日々会議や委員会を開いて勉強しています。
これは、探究学習で養われるような「思考力・判断力・表現力」を試すための問題形式です。

背景を正しく知ることから始めてください。

学習指導要領の改訂と探究学習の導入

近年の学習指導要領の改訂では、「主体的・対話的で深い学び」を重視し、「総合的な探究の時間」や「各教科の探究学習」を導入しました。これにより、知識の暗記だけでなく、思考力・判断力・表現力の育成が求められるようになりました。

大学入試改革の動向

探究学習の導入に合わせて、大学入試でも「知識の再生(暗記)」だけでなく、「思考力・判断力・表現力」を評価する問題が増えました。その一例が「総合問題」と呼ばれる形式です。

「総合問題」が増えた理由

「思考力・判断力・表現力」の評価

総合問題は、複数の教科・領域を横断しながら課題を解決する力を問う問題です。これは探究学習で求められる力と一致します。

知識の応用と実践的な活用を重視

単なる知識の再生ではなく、資料を読み取ったり、自分の考えを論述したりする形式が増加しています。

大学側のニーズ

探究型学習を経た生徒が増えることで、大学側もその力を評価できる入試問題を出す必要が生じました。

総合問題の特徴

教科横断的な出題

例:国語(評論文)+地理の統計データ+倫理の社会問題
あるテーマに関する異なる教科の知識を組み合わせて解答する
資料やデータの読解・分析が必要

図表・グラフ・統計を使った問題が多い

文章の論理構造を理解し、数値と結びつける力が求められる
実社会と関連した問いが多い

SDGs、少子高齢化、AI・情報技術、環境問題など

実際の社会問題に対して多角的な視点で考える力が必要

記述式または選択式でも深い思考を要求

解答を選ぶ際に、単なる暗記ではなく「なぜそうなるのか?」を論理的に考える力が求められる

総合問題の出題例

① 現代社会+国語+地理

テーマ
「都市と地方の人口変動」
出題形式
  • 資料1:評論文(都市化と地方創生に関する文章)
  • 資料2:統計データ(人口推移、出生率・死亡率の変化)
  • 資料3:地理の地図(都市部と地方の移住データ)
問われる力
  • 文章から筆者の主張を理解する(国語的読解)
  • 統計データと結びつけて論理的に考察する(社会科学的思考)
  • 都市と地方の相関関係を考える(地理的視点)

② 生物+化学+数学

テーマ
「持続可能な農業と食糧生産」
出題形式
  • 資料1:生物の知識(光合成と土壌の影響)
  • 資料2:化学のデータ(肥料の化学成分と植物成長の関係)
  • 資料3:数学の計算(農業生産率の変化を数値で分析)
問われる力
  • 生物学的に農作物の成長メカニズムを理解する
  • 化学的に肥料の影響を分析する
  • 数学的にデータを計算し、食糧生産の変化を予測する

③ 歴史+政治経済+倫理

テーマ
「戦後日本の経済成長と格差問題」
出題形式
  • 資料1:歴史の知識(高度経済成長期とバブル崩壊)
  • 資料2:政治経済のデータ(GDPの推移、雇用統計)
  • 資料3:倫理的視点(格差問題に関する哲学者の考え)
問われる力
  • 歴史的背景を理解し、経済成長との関連を考察する
  • 経済データを分析し、社会への影響を考える
  • 哲学的に「公正とは何か?」を考える

総合問題への備え

資料を読む力を鍛える

  • 新聞・ニュースサイトを活用し、社会問題を多面的に考察する
  • グラフや統計データを読み解く練習をする

異なる教科の知識をつなげる意識を持つ

  • 例:「歴史の出来事と現代社会はどうつながるか?」
  • 例:「数学のデータ分析は経済問題にどう使われるか?」

探究学習の経験を活かす

  • 自分で課題を設定し、データ収集や分析を行う経験を積む
  • 他人と議論しながら問題を多角的に考える

まとめ

  • 総合問題は、複数の教科の知識を活用して考える問題
  • 資料読解・データ分析・論理的思考が必要
  • 探究学習で培った「考える力」が直接役立つ
  • 実際の社会問題をもとに練習すると効果的
  • 共通テストの変化:思考力を問う問題が増え、文章量や資料の読解を必要とする問題が多くなった。
  • 国公立・私立大学の個別試験:「総合問題」として、複数の教科の知識を使ったり、社会問題について考えさせる問題が増加。

選抜委員経験者からのコメント

探究学習の導入と入試の「総合問題」の出題は、直接の因果関係というよりも、教育全体の改革の一環として並行して進んでいると考えられます。
そのため、完全に「探究学習が導入された結果、総合問題が出題されるようになった」とは言えませんが、「探究学習の導入が総合問題の増加に影響を与えている。今後もその傾向が強まっていく」と理解してください。

そのため、旧来型の「単なる知識の再生」すなわち、点数や偏差値的な要素も基礎的学力として重要なことは言うまでもありません。
しかし、これはいわば土台部分となります。実際の入学試験での合否が分かれるポイントは、「総合問題」をはじめとする「思考力・判断力・表現力」型の問題となります。